数日前の冷え込んだ夜に、一人の女性が説明会にいらっしゃいました。
2年前に癌を発症、手術も成功し、その後の一年間の抗がん剤治療も終え、再発しない元気な身体つくり のために、知人に勧められてインドでアーユルヴェーダの治療を受けに行ったそうです。その施術がとってもあったので、「アーユルヴェーダとは一体何なのか?」を知りたくなり、私のコースを受けてみようと思われたのでした。
経験のない私が言うのは憚れますが、人は自分が癌だと知らされた時のショックと恐怖ははかり知れませ ん。日本は、2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で亡くなる—そんな国になりました。
私は、慎重に言葉を選びながら、その方に「できたら一生その病気には、縁がなければよかったかもしれませんが、癌によって人生が大きく変わり、幸運だったのかもしれませんね。」とお話しました。
その方は、以前、仕事が大好きで夜中まで働き、毎日の睡眠時間は3時間ほど、休日出勤も普通。思い込みと思い入れが強く、人に寛容になれずに、ぶつかることも多かったそうです。そんな人生にブレーキを かえてくれたのが癌だったのかもしれません。
今では11時には寝て5時に起きる生活リズム、朝のヨーガ、朝夜の瞑想は欠かせないそうです。食生活のバランスも気を付けるようになりました。今までは喋るのが好きで、人の話は聞かない方だったのが、人の言葉に耳を傾けることが多くなったそうです。
上司が変わり、仕事の量が減らされ、7時には帰れる毎日、以前だったら不満に思うような状況も、その時間を生活、生き方の見直しにあてられる、幸運だと思えるような、なんでも前向きにとらえることができるようになったそうです。
「失敗、挫折、病気は人が大きく変わるエネルギーになる」と暗闇の中にいらっしゃる方にはお話することがありますが、その方もまさにそうだったと思います。その状況を受け入れ、そこから何を学ぶかで、それからの人生を豊かで幸福なものにする大きなエネルギーになるのです。かく言う私も10年前に大きな挫折を味わい、眠れない日々が長いこと続きました。アーユルヴェーダや心理学、哲学の学びを通して 、生活習慣や生き方が変わり、自分らしく生きることの意味がやっとわかるようになってきました。
今、苦しみの中にいる方々は、変化を求められていること、その人が乗り越えられない苦労はやってこないこと、より良い人生の扉が開かれた幸運なのだということ、それが宇宙の摂理であると思います。
何かもっとそんなことを伝えていかなくてはならないのだとその方の出会いによって気づかされ、久しぶりに又書きはじめる気持ちになりました。
一時間ほどお話した後、その方はご自身にとって有益な気づきを得られたのか、私に手を合わせて頭を下げられました。そんな姿にむしろ私の方がたくさんの気づきを得たのでした。ありがとうございます。